COLUMN

ウェディングスタッフが見た心が震えたエピソード11『一枚の写真』

実は結婚式当日、主役のおふたり以上に
忙しいお客様がいます。それは親御様です。

ご家族が揃っているかを確認したり、主賓へのご挨拶をしたり、もちろん自分の娘・息子が心配で仕方がありません。
親御様は当日多くのことに気を配っています。

そんな親御様には、一日を通して専属のスタッフが付いており、親御様のサポートと、ご家族様のケアを行います。

ご家族の想いに触れ、いつしかスタッフも家族の一員のようになり、仕事を忘れて一緒に涙してしまうこともあります。

今回は、そんな親御様専属のスタッフから寄せられたエピソードをご紹介します。

 

『Wedding Episode 11 ~一枚の写真~』

 

ある結婚式で、おじい様の腰が痛そうだったので、担当スタッフがクッションを持って行ったところ、さっと手元を隠すしぐさをなさいました。

「何を隠されたのだろう…」

少し気になりおじい様のお手元に目をやると、
そこにはおばあ様のお写真がありました。

ご新婦が小さな頃はよく遊んでくれたという
おじい様とおばあ様。
その仲睦ましさがずっとご新婦の憧れでした。
でも、おばあ様が5年前にお亡くなりになり、
おじい様は、それ以来、一層頑固になられたそうです。

もしかしたらおばあ様に孫娘の晴れ姿を、
見せてあげたかったのかもしれません。

おばあ様と一緒に『結婚おめでとう!』と
伝える約束をしていたのかもしれない。
遠くからご新婦を見つめるおじいさまの表情から、そんなことを考えました。

そこで、ご家族でのお写真撮影をと考えたのです。

おばあ様と一緒に結婚式には参加できなかったけど、今なら一緒に写真に残すことが出来る。
おばあ様もご新婦と一緒に写真を撮れたら、
その写真はおじい様にとってきっと宝物になるだろうと思いました。

でも、スタッフが近付くとすぐに写真を隠してしまうおじい様です。きっと「お写真を撮りに行きませんか?」とお声をかけても遠慮されてしまうかもしれない。

そこで、ウェディングプランナーと話し合い、
急遽ご新郎ご新婦をおじい様のテーブルへご案内することにしました。

おじい様は最初、驚いた表情でしたが、
次第に表情が明るくなっていきます。
固く結んでいた口はほころび、
笑みがこぼれ、とっても嬉しそうなおじい様。

そしてご家族みんなでおじい様の近くに集まっていただき、家族の集合写真をお願いしました。
そして、全員が揃ったタイミングで、
そっとおじい様へ一言お伝えしました。

「おばあ様も一緒に、ご家族みんなでお写真を撮りませんか。」

おじい様は少し戸惑われましたが、
すぐに小さくうなずかれると、
懐から大事そうにおばあ様のお写真を取り出し、
愛おしむように、両手でこちらに向けてくださいました。

そこには、
おじい様と雰囲気が似たおばあ様の笑顔が。

カメラマンシャッターを押した後、
おじい様はおばあ様の写真を握りしめ、
小さく肩を震わせながら笑顔で涙を流されました。

もしかするとこのお写真は
おばあ様のご仏前に飾られているかもしれません。

お写真を見るたびにおじい様の心が少しでも
ほんのり幸せな気持ちになってくださっていたら嬉しく思います。

『目の前のお客様のために、心で動く』

そんなスタッフが、
今日もどこかでお客様の心に寄り添い、
結婚式のお手伝いをしています。

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