COLUMN

ウェディングスタッフが見た心が震えたエピソード7「1本の瓶ビール」

これは1本のビールが家族の笑顔を生んだ物語です。
ご新婦のご両親は小さいころに離別され、
妹様、お姉様と一緒にお母様に育てられてきました。

結婚式当日はお父様も当日参列してくださることとなり、
お父様にも来てほしかったご新婦はとても嬉しそうでした。

そして結婚式当日、
家族のテーブルはお母様、お姉様、妹様、そしてお父様の4名席。
歓談の時間では、お母様やお姉様たちは楽しそうに談笑されており、
あわせてお父様も笑顔を見せるのですが、少し寂しそうです。

フォトタイムとなりお写真撮影のご案内をしたところ、
お母様とご姉妹は嬉しそうにお二人の元へ進まれました。

しかし、お父様は一緒には向かわず
微笑みながら、その様子を遠くから眺めていらっしゃったのです。

ご新婦が、お父様の事が好きだということを知っていた私は、
直接お父様の口からご新婦へ「おめでとう」と伝えて頂きたい。
もっと近い距離で、お父様にも楽しんでほしい。
そう思って1本の瓶ビールをお渡ししました。
お二人のもとへと向かうきっかけ作りです。

「お父様。ぜひ、ご新郎に注いであげてください。
そして、ご新婦に声をかけてあげてください。
ずっと前からお父様とお会いできるのを楽しみにされていました」

お父様は一呼吸おいてから、にこやかに「そうだね。」と頷かれました。
そして、ゆっくりとお二人のもとへ向かい、少し恥ずかしそうにご新郎へ声をかけるとビールを注がれました。

ビールを注ぎ終わったお父様とご新郎は照れくさそうに、笑顔で握手を交わされました。
ご新婦はとても嬉しそうな表情です。
そしてその様子を、お母様もご覧になっていらっしゃいました。

お父様が席に戻ったあとは、まっすぐメインテーブルのお二人へ目を向け、
ご結婚式を楽しんでくださっている様子でした。
その横顔を見て、お母様がお父様に話しかけてくださったのです。

結婚式がお開きになった後、
お二人とお母様、ご姉妹、そしてお父様が一緒に笑顔で談笑しながら、
家族写真を撮影される姿を見て、私はとても温かい気持ちになりました。

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